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メディカルサービス法人  24

 3. 判断 

 

 本件は、本件更正処分に係る手続の違法性の存否及び所得税法第157条の適用の可否について争いがあるので、以下審理する。

 (1)認定事実

  原処分関係資料及び当審判所の調査によると、次の事実が認められる。

 イ 調査担当職員は、当審判所に対し、本件調査の状況について次のとおり答述している。

  (イ)請求人の自宅において、請求人に対し、本件請負金額の計算根拠となっている人件費の倍

   率について質問した際に、「税理士でないと分からない。」というような回答があったため、A社

   の役員であれば、契約内容を理解しているはずであり、本人自身が分からないというのはおか

   しいという意味で「ペーパーカンパニー」という言葉を使用したと記憶している。

  

  (ロ)調査内容について請求人に説明する目的で請求人に電話をかけた。

     請求人に直接電話した理由は、①この時期には、関与税理士から調査に対する抗議が続い

   ていたため、関与税理士とは面接できないと考えた、②関与税理士とは、以前に面接の約束を 

   破られたりいろいろな理由をつけられて、調査期間中に一度も面接できないという通常では考え

   られない状況にあったことから、これについても請求人に伝えたかった。 

 

  ロ 調査担当職員は、関与税理士から委任状が提出された以降数回にわたり、関与税理士と面

   接すべく、事務所への臨場及び電話での連絡を行なっているが、面接には至っていない。

    特に、税務署内での面接を約束していたが、関与税理士は連絡もせず出署しなかった。

 

      判断につきまして、次回以後に続きます。

メディカルサービス法人  23

 (2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの採決を求める。

イ 本件更正処分について

 (イ) 更生処分の手続き

   原処分は、所得税法及び国税通則法(以下「通則法」という。)の規定に基づき適正に行なわ 

 れており、何ら違法な点はない。

 (ロ) 事業所得の金額等

  A 原処分庁が調査したところ、本件請負業務は、契約書及びその実態からみて次の事実が認

 められ、実質的に単純労働者の人材派遣業務であると判断される。

  (A) 請求人とA社で契約している業務内容は、前記1の(2)のロのとおりである。

  (B) A社から派遣される従業員には、資格を持った者はいない。

  (C) 本件請負金額の算定根拠となっているのは、「人件費」である。

  B 請求人がA社に対して殊更に高額な外注費を支払うべき合理的な理由も認められない。

 

        次回は、  判断についてお伝えいたします。 

メディカルサービス法人  22

 (ロ)本件外注費の額は、次の理由から適正である。

 

A  A社が請求人に派遣している従業員の人件費の額に対する請負金額の比率は、1.59倍ないし

1.77倍であり、A社のような小企業のサービス業種の統計上の人件費対売上高比率の平均倍率の

範囲内である。

B  請求人は、適正な外注費を算出する方法として、次の統計資料に基づいた人件費対請負金額

の比率を考慮した。

  (A)「小企業の経済指標」(国民金融公庫総合研究所編)によれば、小企業の人件費の額対売

上額の平均値は43.6%ないし44.0%であり、したがって、人件費の額対売上額の平均倍率は2.27

倍ないし2.29倍である。

 

                次回は、原処分庁の主張を述べていきます。

メディカルサービス法人  21

 2. 主

 

 原処分庁は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。

イ 事業所得の金額

 (イ)原処分庁は、所得税法第157条を適用して事業所得の金額を算定しているが、次のとおり、

原処分には、その内容に誤りがある。

 なお、原処分庁が採用した同業者比準方式は争わない。

 

  A 本件外注費は、業務を包括的に委託したことの対価であり、外注先のA社はメディカルサービ

ス法人であることから、同業者比準方式で用いる同業者はA社と業務内容、事業規模、収入金額等

が近似する法人とし、それらの法人の平均値で本件外注費が適正か否かを判断すべきである。

  B 本件倍率は、信頼できる統計数値とあまりにもかけ離れており、本件比準同業者は、「業務

内容、事業規模、収入金額等がA社と近似する同業者であること」を完全に欠落させていると見ざる

を得ない。

  C 本件倍率で請負金額を置き換えた場合、A社の決算では高額の欠損が生じることからも、本

件比準同業者がA社と異業種であることが明らかである。

 

                     (請求人の主張は次回に続きます。) 

メディカルサービス法人  20

 ハ 請求人は、各年分の事業所得の収支内訳書に、本件契約書に係る支払金額(以下「本件請負 

金額」という。)を外注費(以下「本件外注費」という。)として、事業所得の金額の計算において必要

経費 に算入している。

 

 ニ 本件請負金額は、契約期間に対応する前年同期間のA社が派遣した従業員に係る給与支給

 金額(以下「基礎給与額」という。)に、請求人とA社とが算定した倍率を乗じて計算されている。

 

 ホ 原処分庁は、請求人が必要経費に算入した本件外注費が、同族関係にない通常一般の取引

 を行っているA社の同業者(以下「本件比準同業者という。)の人材派遣倍率(本件比準同業者の 

 派遣した従業員の人件費等の額を分母とし、派遣先からの収入金額を分子とした倍率の平均値を

 いい、以下「本件倍率」という。)に基礎給与額を乗じて計算した相当な外注費の額(以下「認定外

 注費」という。)を超えるとして、所得税法第157条(同族会社の行為又は計算の否認)第1項の規

 定に基づいて、その超える額については各年分の必要経費には算入を認められないとして更正処

 分をした。  

メディカルサービス法人  19

 今回から、メディカルサービス法人に関する税務判例のご紹介をさせていただきたいと思います。

 

 事例は何件かございます。1件づつの事案も概要から、それぞれの主張、審判所の判断等を何回かに分けて記述させていただきたいと思います。

 

  【 1 】MS法人と医療機関との取引  その①

    MS法人に支払った業務委託料について

  1. 事案の概要   

  本件は、医療保険業(個人病院)を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が同族会社である

有限会社A(以下「A社」という。)に支払った外注費の額を認容した場合、請求人の所得税の負担を

不当に減少させる結果となると認められるか否かを争点とする。

  

  (1) 審査請求に至る経緯

  イ  請求人は、各年分の所得税について、いずれも法定申告期限までに申告した。

  (2)基礎事実

    以下の事実は請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事

  実が認められる。

  イ  A社は、請求人の親族が全額出資している法人税法第2条(定義)第10号に該当する同族

  会社であり、請求人は当該法人の取締役である。

  ロ  請求人とA社は、各年分において請求人の業務に関する請負契約(以下「本件契約書」とい

  う。)を交わしている。

    なお、A社が請求人に対して行う業務(以下「本件請負業務」という。)は、本件契約書の第2 

   条に定められており、同契約書の業務仕様書によれば、次のとおりとなっている。

  (イ) 病院の電話、受付、来客案内業務補助、電算入力業務、請求書・領収書整理、保険請求

   業務、患者負担分の請求業務、銀行等への入出金業務、会計・経理業務等。

  (ロ) 不動産の管理

  (ハ) 病院の車両運転及び管理、駐車場管理及び院内の営繕

  (ニ) 院内の清掃、クリーニング

  (ホ)上記に付帯する一切の業務  

                  →  事案の概要につきましては、次回に続きます。

 

メディカルサービス法人  18

   医療機関とMS法人の取引

 

 1.法人格否認規定

 医療機関が関連する同族会社に不相当に高額な管理委託料又は、不動産の賃借料を支払った場合に、収受する側の同族会社は、外部委託との比較においては、当該医療機関の所得は同族会社の介在により分散されることになりますが、この場合の同族会社への収入を医療機関の収入と同視(支出の否認)するとすれば、同族会社の法人格を否認する規定と解するに等しいこととなり、このような法人格否認規定は考えられないことになります。

 

  2. 立証責任

  医療機関と関連する上記1について同族会社との取引における不相当に高額な取引の立証責任は、その行為が不相当に高額な取引と主張する側(課税庁)にあると考えられます。

  

メディカルサービス法人  17

 5. 医療法人への無利息貸付との関係

 

 例えば、医療法人の理事長が医療法人に多額な資金を無利息で貸し付けた場合には、医療法人の理事長に次の問題が生じることになります。

 

  ① 所得税法  36条

  その年において収入すべき金額

  

  ② 所得税法  157条

  同族会社の行為計算の否認について考察してみますと

 

   ① については、当該医療法人と理事長との間で無利息貸付の合意がなされていることから、 

   所得税法36条①のその年において収入すべき金額はないことになります。

   ②については、上記の説明のとおり、医療法人には適用されないことから、本件テーマは問

   題の生じる余地がないものと考えられます。

 

   

 

メディカルサービス法人  16

 4. 「同族会社とは営利を目的とした同族会社です。」

 同族会社の行為計算の否認

 この規定の適用となるのは、あくまでも営利を目的とする会社をいい、会社以外の公益法人等は除かれるものと考えられます。

 

 1. 事業の性格から  公益性のある法人は、公益法人、医療法人(中間法人)となり一般の会社とは区別されることになります。

 

 2. 事業内容(医療法人)は、収益事業以外の法人であり公益事業を行なっているものと考えられます。

 

  以上のことから、医療法人は同族会社の行為計算の否認規定の適用はないことと考えられま 

 す。

メディカルサービス法人  15

 (2)法人税法132条は、経済的不合理性に着目していることから、所得税法157条の創設規定と同義語として断定するには、やや問題が生じるかもしれませんが、同族会社という、税法上の用語解釈が所得税法と法人税法で異なることも不自然と考えますと、「同族会社の行為計算の否認」規定は過去の論争から離れ、創設規定すなわち同族会社のみに適用されると解釈すべきでしょう。
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