
リスクマネジメント
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医師の立場からのリスクマネジメントをどう整えておくか

「医療過誤とは医師が患者に対して診療行為を施すにあたり、当然払うべき業務上必要とされる注意義務を怠り、これによって患者の生命・身体を侵害し、支障などの結果を惹起せしめた場合をいうもので、これは法律用語である。」『(医療過誤法)青林書院』
医療過誤訴訟は年々増加しつつあります。医師の損害賠償請求事件として取りざたされるケースが多くなっています。
医療過誤対策の一つは、事故が起きた時点においていかに医師が適応できるかにあります。訴訟に持ち込まれると、クリニックの信用問題にかかわる事態となってしまうため、緊急に医療過誤専門の弁護士への相談が必要不可欠といえます。
日常診療における対策は、当然にカルテが証拠書類となります。診療記録・インフォームド・コンセントの記録・治療の必要性等々が記載されているかが医師・診療側に勝訴をもたらす結果ともなりうるのです。
等々大病院における医療過誤が大きな判例として取り上げられていますが、開業医師の医療過誤訴訟も多いのが実態です。
医師法21条には、医師は死体又は妊婦4月以上の死産児を検案して異常があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならないと明記されています。
つまり、医師が死体等を検案して異常があると認めた場合の警察への届出を義務付けています。何をもって異常死と位置づけるべきなのかは、今もって医学界でも多々議論がなされているようです。
医療側は、「生かす」ために医療を行なっています。当然に殺すことは予期していません。その意味では、「死亡は予期しない死亡」になってしまいます。
この死亡届で義務を怠り、医療事故として一旦告訴されてしまうと、刑事捜査手続きの中に組み込まれ、警察の取調べを受けることは元より、記者会見という場において、説明責任を果たすよう求められることになります。
日常診療の現場では常に、法的な視点と法的リスクを加味した姿勢が必要となってくるといえるでしょう。

医師には守秘義務が課せられています。刑法134条 秘密漏示罪 「医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師・・・又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以上の懲役又は10万円以上の罰金に処する」と規定されています。
そして、さらに個人情報保護法が規定されその遵守を求められています。この法律の目的は、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする(第1条)とされています。医師は個人情報取扱事業者に該当しますので、個人情報の利用目的・第三者提供の原則禁止の規定を遵守しなければなりません。
利用目的の特定:法15条 個人情報を取扱うにあたっては、利用目的をできる限り特定しなければならない。
利用目的による制限:法16条 個人情報を利用目的の達成に必要な範囲を超えて取扱ってはならない。
法23条 あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
医師のカルテの漏洩はもちろん電子化されつつあるカルテのデータ流出等リスクを抱えている状況にあります。このような守秘義務に関するリスクに対しても厳重なマネジメントを必要としています。
平成22年1月20日豊橋市の歯科医が、医療法で禁止されているインプラントの再利用を同医院で行なっているとの内部告発が元職員から市医師会に行なわれました。そして、東京の厚労省記者クラブで会見が開かれる事態となり、歯科医院は閉院・自殺未遂という結果になったのはご存知のことと思います。このケースは歯科医の医療法違反ですので社会的責任を問われるのは当然のことといえます。
大企業でも行なわれている内部告発が、このような個人クリニックでも行なわれている現実があります。法令違反行為、倫理上問題のある行為、規定違反等コンプライアンス上問題のある行為に対して行なった内部告発者は、公益通報者保護法という法律によって不利益を受けないよう保護される制度があります。医療機関においても、上記の例のように行政機関やマスコミへの公益通報ではなく、まず内部通報を先にしてもらう体制を整えておく必要があります。つまり、内部通報窓口の設置をしておく必要があります。医療法人であれば、監査役が窓口となることや個人クリニックであれば事務長が窓口となるといった「内部通報規程」を策定しておくことにより、リスクを避ける必要性があるといえます。
昨今の医師不足、看護師不足の状況により病床削減が相次ぐ状況にあり病院経営にも大きな影響が出ています。医師、看護師等の医療従事者が長時間労働を強いられる中、職業性ストレスによる抑うつ状態になる方、自殺者までもが出ている状況にまで追い込まれています。診療報酬の改訂により、僻地医療や緊急医療が手厚く保護されるようにはなりました。しかしながら、各医療機関にとってはこの報酬改訂によって医師、看護師等を確保し医療経営が成り立つのかということも危惧することになります。
平成22年4月より労働基準法が改正されました。月60時間超の時間外賃金の割増率が50%以上に大幅に引き上げられました。この一番の狙いは、長時間労働を抑制することを目的としています。中小の医療法人、個人クリニック等は3年間の猶予が認められていますが、大病院にいたっては4月からの適用を余儀なくされてしまいます。この改正労働基準法は経営者にとって、経営コストの上昇をもたらすという負の側面があります。しかしながら、この労働基準法を遵守しなければいけないのは当然のことといえます。大企業等においては、過去の未払い残業代の請求訴訟までおきているのが現状です。医療経営者は、過重労働を強いられている医療従事者の方々から、未払い残業代の請求訴訟までおこされるリスクにも対応しなければなりません。そのためには、労働基準法に準拠した就業規則の見直し、賃金規程や労使協定、勤怠管理などのシステム管理におよぶまで整備をしておく必要があるといえます。
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